2018年4月26日木曜日

「ルールとパターンの英文解釈」その1

このブログの記念すべき第1回には先日(2018/4/19)、研究者から発売されたばかりの
『[新版] ルールとパターンの英文解釈』伊藤和夫著を取り上げます。






既にアマゾンのレビューにも書いていますし、内容は重なる所が多いですが、こちらでのみ書いていること(ここでしか書けない物とも)も多々ありますのでレビューをお読みいただいた方も是非お読みいただければと思います。

1.この本はそもそもどうやってできた本か?

この本は1983年4月~1984年1月まで文化放送とラジオ短波をキーステーションに旺文社の提供で放送されていた「旺文社大学受験ラジオ講座」(ラ講)の中で「伊藤のルールとパターンの英文解釈」の名で放送されたものを文字起こししたものです。

こう書くと放送終了後すぐに書籍化されたように聞こえますが、実はそうではありません。この文字起こし本が旺文社より出版されたのは放送終了の10年後、1994年3月なのです。この放送が終了してすぐにこの放送を録音した音声教材「ラ講テープライブラリー 伊藤のルールとパターンの英文解釈」というテキスト1冊、カセットテープ20巻の音声教材として出版されました。

ちなみに伊藤先生のラ講の講座はその翌年からは年の半分だけの出講となり、以下のような講座を担当されていました。

「ルールとパターンの英文解釈入門」
「ルールとパターンの英文解釈演習」(別内容で2年度)
「ケーススタディ英文解釈」(これは後に同名のラ講テープライブラリ―として発売)
「英文法集中クリニック」(半年×3年度)
(これは後にラ講テープライブラリ―でPart1~3の3部作として発売)

上記の「ケーススタディ」はテープライブラリーに続き、駿台文庫から「英文和訳の十番勝負」という本の原型になっています。「英文法集中クリニック」は後に研究社から出版された「英文法のナビゲーター(上)(下)」としてほぼ同じ内容で出版されています。


※(左)テープセミナーのカセット (中央)旺文社版 (右)研究社版

2.この本について

さて、話をこの本に戻します。

私は旺文社大学受験ラジオ講座(ラ講)で生放送(とはいえ、実際に生放送というわけではなくリアルタイムで、という意味です)されていた「伊藤のルールとパターンの英文解釈」を聞いていました。

講座の一番初めの4月の第1回の記念すべき伊藤先生のはじめの一言は

「みなさんこんにちは、私が伊藤和夫です」

でした。

真夜中に棒読みのような単調な語り口で「こんにちは」と聞いたときには思わず笑ってしまいましたが、その後になってもそこは編集されずそのままでした。でもそれも今では楽しい思い出です。

ところで、本放送とラ講テープライブラリーでは「比較」が一切扱われていません。

そこは旺文社版で書籍版になった時に、この原本となった講座の翌年に放送された「伊藤のルールとパターンの英文解釈演習」という応用篇で比較を扱った部分を差し替えて(つまり、元の講座は一つ減ったが、復習的内容だったので支障はなかった)網羅性を高くして出版されました。

ただ、その代りかどうかはわかりませんが、書籍版には放送当時、別冊解答集にあった練習問題「For Further Study」は全部カットされてしまいました。For Further Studyでは、講義で扱った文章の中から特にポイントになる部分を復習できるように2~3行(時に5~6行)の英文解釈の問題と解答が2~3題づつありました。

今回研究社から新版が出ると聞いて、今度は一切省略なしで出版されるかな、と期待して予約注文したのですが残念ながらそれはかないませんでした。


3.他の伊藤本とこの本はどういう位置づけになるか?

この問題は伊藤本で勉強しようとする受験生や高校生にとっては大きな問題でしょう。

結論から言えば、

「ビジュアル英文解釈Ⅰ・Ⅱ」とはほとんど重なり、
「解釈教室シリーズ」とこの本は基本的に中途半端に重なる本

といえます。

強いて言うならこの「ルールとパターンの英文解釈」を読んでから「旧版の英文解釈教室」「長文読解教室」にすすむというのが一番無駄のないパターンだと思います。しかし「長文読解教室」はともかくとして改訂版が出ている「英文解釈教室」の旧版をわざわざ探してくる必要もないでしょう。もちろん、多少の重なりを甘んじれば、今の「英文解釈教室」をこの本の後にやるのも良いと思います。

「英文解釈教室[入門]」「同[基礎]」はこの本とほとんどレベル的には重なります。入門の方はこの本の手前の英文法の確認という意味と割り切れば、入門をやってからこの本に取り組んでもよいでしょう。しかし、それでもこの本の《10》くらいまではレベル的にかぶります。基礎編はほぼ重なっていると言ってよいでしょう。到達点は「英文解釈教室」の最初くらい、という感じでしょうか。

その意味では「研究社が出すという意味」は実は全くなく、単純に伊藤本だから版権獲得して出版した、という「研究社のただの金儲け」なんだろうな、と思いました。

とはいえ、旺文社版の書籍がネットオークション等で馬鹿げた価格で取引されているのを見ると、旺文社が出版し続ける意志がないなら、研究社が出してくれる意味はあると思いますし、その価値は認めています。

(2へ続く)




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