極めて有名な英文参考書シリーズについてこれから書いていきます。
やったことがあるかどうかは別として、それなりの難易度の大学を受ける受験生やかつての受験生でこのシリーズを知らないと言ったらそれはモグリでしょう。
(英文解釈教室 入門編と別冊)
そんな有名なシリーズについてなので、正直私もそれなりに緊張して書いています(笑い
1.最後の英文解釈教室
入門編なのだから、「最初の英文解釈教室」なのでは?と思われるかもしれません。しかし、本当に最後の「英文解釈教室」なのです。
実はこの入門編は英文解釈教室シリーズの最後に出版された本なのです。
1977年 英文解釈教室
1996年 英文解釈教室 基礎編
1996年 英文解釈教室 入門編
という順で刊行されました。
もちろん、1997年に 「英文解釈教室(改訂版)」が出ているわけですし、1977年版の英文解釈教室とこの改訂版では同じ本とは言えないレベルの大改訂画家行われているわけですから、こちらを最後と言えなくもないのですが、構成や文体などが変わっただけという観方もできなくはないので全くの新規という意味ではこの「英文解釈教室[入門編]」が最後となるのです。
2.伊藤英語とそれ以前
さて、伊藤先生は
1968年 「基本英文七〇〇選』
1972年 「英文法頻出問題演習」
1975年 「英語構文詳解」
1977年 「英文解釈教室」
と、約10年かけて「伊藤英語」の体系を一応完成させました。旧版の「英文解釈教室」はその一つの到達点といっても過言ではないでしょう。
私が高校生の頃、東大を受験する連中は誰もが「英文解釈教室」を持っていました。ちょっと先輩の世代になると山崎貞「新々英文解釈研究」が一緒の本棚に収まっていたりもしましたが、実はこの「英文解釈教室」はこの
「新々英文解釈研究」を代表とする対象以来の旧態依然とした参考書の駆逐と新しい「あるべき参考書像」を示すために書かれたともいえるのです。実際伊藤先生ご自身も
「山崎貞という人がいた。この人が大正元年に出した英文解釈の本が、もちろんその間に手を加えているんだが、以来、半世紀以上にわたってまだ図書館じゃない、本屋にあるんだよ。
僕は最初アルバイトと思って始めた予備校教師の仕事だったが、どこかで本気でやることになってからは、せっかくやるなら、やっぱり山崎貞を駆逐するくらいのことはやりたい。そうでなければ自分がこの分野に足を踏み入れた意味はないと思ったのは事実だね。」
と平成8年『駿台予備学校 師たちの回想』の「英語科 伊藤和夫先生にきく」の中ではっきりと述べておられます。
もちろん、当時の私はそのような事情は知るはずもなく、先輩の家の本棚に山貞が、机の上に教室が、という光景はある意味伊藤先生の目標が達成されている情景の縮図だったともいえるな、と今では思います。
とはいえ、実を言うと私は当時、伊藤和夫も山貞も持っておらず、正直
「どちらも先輩方は勧めるけれど:jちらも難しいしとっつきにくい」
と、思っていました。
「英語劣等生の鏡」ですね(笑い
3.ラ講と伊藤和夫
さて、このように英語の参考書の勢力図を書き換えた「英文解釈教室」でしたが、前述のように1997年に大改訂され、同時に
「英文解釈教室のシリーズ化」がなされました。
この書いてとシリーズ化は旺文社の大学受験ラジオ講座(以下ラ講)で
「ルールとパターンの英文解釈」(これが本編のようなもの)
「ルールとパターンの英文解釈 入門編」
「ルールとパターンの英文解釈 演習編」
を講義された中で発想されたのではないかと思っています。あるいはその構想をラ講で試し、上手くいったので更に具体的な構想と執筆に踏み切った、という事なのかもしれません。
どちらにせよ、「英文法のナビゲーター」同様にラ講での講義が元となっていることは間違いないと思われます。
ちなみにラ講での講義の一部は研究社から最近出た
「ルールとパターンの英文解釈」で再現されていますし「英文法集中クリニック」は
「英文法のナビゲーター」としてほぼ再現されています。
「ルールとパターンの英文解釈」と
「英文法のナビゲーター」についてはリンク先に詳細があります。
これは「英文解釈教室」について書くときに詳しく書く予定ですが、旧版の「英文解釈教室」からラ講の講義をある意味橋渡しとして1987年にPart I,翌年にPart IIが出た「ビジュアル英文解釈」へとつながっていく中で、伊藤先生の中では旧版の「英文解釈教室」が浮いた存在になってきてしまっていたのかな、と私は個人的に想像しています。
4.英文解釈教室[入門編]の構成
この本は以前
「英文法どっちがどっち」の所で触れたように、各章(各講)が全て
[1]短文問題
[2]長文
という構成になっています。
この[1]が
「英文法どっちがどっち」と同じ、英語初学者が間違えやすいものの判別問題で構成されています。ちなみに内容を目次的に列挙すると、
第1講 名詞か動詞か
第2講 名詞か形容詞か
第3講 自動詞か他動詞か
第4講 直接目的語か目的補語か
第5講 形容詞か副詞か
第6講 副詞か前置詞か
第7講 直説法か仮定法か
第8講 [不定詞]名詞用法か副詞用法か
第9講 [不定詞]形容詞用法か副詞用法か
第10講 現在分詞か動名詞か(1)
第11講 現在分詞か動名詞か(2) -ing + 名詞
第12講 現在分詞か動名詞か(3) -ing + 名詞
第13講 過去か過去分詞か
第14講 関係詞か接続詞か
第15講 名詞節か副詞節か
Appendix
[1]前置詞か接続詞か
[2]名詞節か形容詞節か
[3]動詞+前置詞的副詞
と、なっています。
「英文法どっちがどっち」と比べてこの本に章立てとしてないのは、
3 動詞 or 形容詞?
5 形容詞 or 前置詞?
6 副詞 or 前置詞?
8 目的語 or 補語?
17 文否定 or 語否定?
18 部分否定 or 全体否定?
21 形式主語 ... 名詞節 or 強調構文?
22 関係代名詞 or 関係形容詞?
ですが、どれも本文の中でこれらについては触れてあります。また、本書の「第13講 過去か過去分詞か」は
「英文法どっちがどっち」では扱われていません。
さて、この本は[1]でこうした解釈の中で文法的に間違えやすい所をあらかじめ学習した上で[2]の長文でそうした部分を意識しながら、その他化の文法事項をからめつつ
「解釈に文法をどう活かすか」
を読者に徹底的にしこんでいきます。ちなみに口語調ですが「ビジュアル英文解釈」のような学生と教師の疑似的会話の中に見られるウザさはありません(笑い
英文解釈教室[入門編](2)では、この本の効果的学習法等を中心に書く予定です。