2018年5月15日火曜日

新・英文法頻出問題演習(1)

1.「英文法頻出問題演習」の歴史

歴史と言っても大したことはありません(笑い
まづ、1972年に初版が出版されています。それまでは山崎貞の「新自修英文典」(1912年)、原仙作の「英文法標準問題精講」(1966年)、あるいは西尾孝の実戦英語水準票シリーズの「実戦英文法」(1967年)等が主だったものでした。このような大学の教員が書いたものがメインだった時代に、予備校講師が書いたこの本がスタンダードの1つに加わったことはある意味歴史的な事でした。

やがて、この本も1979年に増補改訂版が出版されました。


当時の目次は以下のようになっていました。

Part Ⅰ Essentials of English Grammer
1.Concord(呼応)
2.Tense(時制)
3.Subjunctive(仮定法)
4.Auxiliary(助動詞)
5.Voice(態)
6.Verbs & Sentence Constructions, etc.(動詞と文の構造その他)
7.Infinitive(不定詞)
8.Participle & Gerund(分詞と動名詞)
9.Noun, Pronoun(名詞・代名詞)
10.Article(冠詞)
11.Adjective & Adverb(形容詞,副詞)
12.Relative(関係詞)
13.Conjunction, etc.(接続詞その他)
14.Narration(話法)

尚、Part Ⅱの目次は今手に入る「Part Ⅱ 熟語編」と同じです。


1991年に新版が出版されます。


この新版では、文法編が大きく改定され、現状の版と同じ目次になっています。また、この版から「鈴木長十氏による序」がなくなっています。

何よりも大きな変化はS+V+X+X等の「Xというポジションの記述」による文構造の把握の仕方をメインの考え方として導入したことでしょう。これは「英文法教室」(1979年)に書かれてはいたものの、それ以上の発展を著作の中ではされていませんでした。しかし、この新版でメイン項目として扱われ、その後出版されたり改定されたその他の解釈本などにも導入され、伊藤英語の新しい骨格となっています。同時に、これによって文法と解釈の一体化がなされたとも言えますし、学ぶ側からしてみれば「文法と会社を一体的に学ぶシステム」が提示されたとと取ることができます。

また、この本は伊藤先生の本の中では唯一「索引がページ数の関係で割愛」されてしまっています。

伊藤和夫の没後(1997年没)、2001年に現行版である2分冊ものが出版されます。


なぜ2分冊にしたのか、というのは想像の域を出ませんが、特に必要はなかったはずなので営業的な理由だと思います。また「英頻はpart Ⅱの熟語編だけやればよい」という説もあるのでそれに迎合すればより売れるのかもしれない、という営業判断があったのかもしれません。

ちなみに私はむしろ逆で

「どちらかしかやらない(時間的にできない)ならPart Ⅰだけをやりなさい」

と、この数十年指導してきましたが、指導した学生の合格実績などが、このアドバイスの正しさを証明しています。

さて、この2分冊版になっての変更点は以下の2点です。

1.2色刷りになった
2.「誰が作ったのかはわからない索引」が追加された

これら以外は全く内容的には変わっていません。


2.「英文法頻出問題演習」の索引

この2つ目の索引はたしかにないよりはあったほうが良いと思いますが、誰が作成したものなのかが明記されていないことは問題だと思います。もちろん、伊藤先生の遺稿の中にあった可能性も否定はできませんがそれならばそれで明記すべきでしょう。

伊藤先生が1991年版で「索引の割愛」を残念なこととしてあげてあることを考えると、その一文を省略してあたかも最初から索引があったかのような文章を「使用上の注意」に載せてある(pⅷ参照)というのは読者や著作者への経緯という意味での良心の問題としても、また法的には問題なかったにしても著作権の問題としても如何なものかと思います。

また、伊藤和夫の著作を何冊か学習した人ならわかると思うのですが「伊藤和夫作の索引」は伊藤先生の頭の中を公開するような、執拗なまでの緻密なクロスリファランスと独特な索引項目にその特徴があります。

しかし、この現行版の索引は「非常に素直で普通の索引」になっています。そして項目樹広い方のくせなどからも、これは駿台の講師の方辺りによる(なんとなくどなたがかかわっているかは想像はできる)ものではないかと私は思っています。どちらでも良いと思うのですが、どちらにしてもこの索引の由来を明記すべきことには変わりはありません。

私がなぜこの索引にここまでこだわるかと言えば、先に書いたように「伊藤和夫作の索引」は本を始めから終わりまで読んでいくのが縦糸なら、索引によって一つの項目を色々な所に戻って確認することによってより知識を体系化させるための横糸になっているからなのです。これが伊藤先生御自身の作によるものなら読者は他の本の索引同様に使うことができますが、もしこれが伊藤和夫以外の人の手によるものならば、そうした使い方が期待できないからなのです。本の使い方にも関わることなので私はこだわらざるを得ないのです。

そう考えると、1979年版の索引項目と「英文法のナビゲーター」の索引を頼りに自分で項目を拾い上げ、自分なりの索引を作るというのが一番良い勉強になるのかな、とも思いました。とはいえ、その為にわざわざ1979年版を探してくるというのもナンセンスなので、実際にはこの索引は項目検索用と割り切り、有機的な横糸としての索引は「英文法のナビゲーター」に譲る、というのが現実的だと思います。

尚「Part Ⅱ 熟語編」の方の索引は、伊藤先生という著者の御意向にどのくらい沿っているかは別として、ある意味機械的に拾い上げた熟語一覧のようなものなので、憶えているかどうかのチェック、という意味では十分に使えるものだと思います。

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