1.この本について
1993年に一竹書房の「伊藤和夫のICシリーズ」の1刷として出版された本です。
この本はしばらく絶版になっていて、ヤフオク等で馬鹿げた値段がついていましたが、同シリーズの他の本と一緒に復刊ドットコムから2014年12月に復刊されて普通に手に入る本になりました。
とはいえ、このシリーズは元々700円くらいの本。復刊されたものは1,500円+税。
103ページ(索引含む)で1,500円+税
倍以上の値段での復刊で、売れ続けているのを見ると、編集や企画などの労もなく、事前に復刊リクエストというアンケートである程度以上の販売見込みがついてから売り出すというこの復刊ビジネスがいかに儲かるかを物語っているなぁ、と思います。
(左が1993年の一竹書房版、右が2014年の復刊ドットコム版)
2.内容
紛らわしいもの同士の識別問題を題材に文中の品詞(など)を正確に把握するための解説をしている本です。と、言葉で解説するよりも目次をみて頂く方が手っ取り早いでしょう。
(以下引用)
「英文法どっちががどっち」目次
まえがき
1 名詞 or 動詞?
2 名詞 or 形容詞?
3 動詞 or 形容詞?
4 形容詞 or 副詞?
5 形容詞 or 前置詞?
6 副詞 or 前置詞?
7 自動詞 or 他動詞?
8 目的語 or 補語?
9 直接目的語 or 目的補語?
10 過去 or 過去分詞?
11 直説法 or 仮定法?
12 現在分詞 or 動名詞?(1)
13 現在分詞 or 動名詞?(2)
14 現在分詞 or 動名詞?(3)
15 (不定詞)名詞用法 or 副詞用法?
16 (不定詞)形容詞用法 or 副詞用法?
17 文否定 or 語否定?
18 部分否定 or 全体否定?
19 前置詞 or 接続詞?
20 関係詞 or 接続詞?
21 形式主語 ... 名詞節 or 強調構文?
22 関係代名詞 or 関係形容詞?
23 名詞節 or 形容詞節?
24 名詞節 or 副詞節?
とぅーるぼっくす(Tool Box):名詞の特殊用法
英文法ミニミニ辞典
Index
(引用終わり)
この目次を見て頂くとわかりますが、特に解釈上致命的なミスにつながりやすいものの識別に徹しています。その解説は初心者にもわかりやすく、とても優れています。
3.「英文法どっちがどっち」と「英文解釈教室[入門編]」
この本は良い本か、ダメな本か、と言えば間違いなく良い本です。そして2のように書くと、この本を私がとてもお勧めするようですが、実は違います。
この本は伊藤和夫本コレクター以外には買う必要が全くない本です。
と、言うには理由があります。
最初に書いたようにこの本はそもそも1993年に出た本です。復刊されたのが2014年とはいえ、内容は全く変わっていません。
さらに伊藤和夫は1996年に「英文解釈教室[入門編]」を出版します。実はこの本については後日改めて書きますが、各章(各講)が全て
[1]短文問題
[2]長文
という構成になっています。
そしてこの[1]の内容がこの「英文法どっちがどっち」と本質的には全く同じ内容なのです。
例文や問題文こそ違いますが、むしろ「英文法どっちがどっち」を元ネタにして、よりわかりやすく作り直した感じなのです。ですから、
1.「英文解釈教室[入門編]」とこの本はどちらかをやればよい本になっている
2.「英文解釈教室[入門編]」の方が後から、しかも「英文解釈教室シリーズ」として出ているだけに説明もよりこなれたものになっているし、他の本との連携もよくできている。
3.「英文解釈教室[入門編]」は本文142ページ、別冊66ページで1,170円+税
この本は先程指摘したように103ページ(索引含む)で1,500円+税
4.内容は当然「英文解釈教室[入門編]」は識別問題と長文を連携できるようになっている。
という比較ができます。
こう考えると、というかどう考えても、この本を買うくらいなら「英文解釈教室[入門編]」を買う方が良いのは自明です。もちろん、長文はいらない、語の本のように識別問題だけをやりたい、という人もいるでしょう。そういう人は「英文解釈教室[入門編]」の[1]だけをやればよいのです。
結論として言えば「英文解釈教室」の改定とそれに伴う[入門編][基礎編]の刊行という「シリーズ化の構想」の中でその下書き的なものとして出た本という評価が利用者に対しては一番適切な評価だと思います。