2018年4月29日日曜日

10時間授業で中学英語を卒業する―英会話スクールへ行く、その前に

今回取り上げるのは『10時間授業で中学英語を卒業する―英会話スクールへ行く、その前に (実況中継CD‐ROMブックス)』(二本柳啓文著)です。


もともとは英語がとても苦手な高校生と大学受験生の為に語学春秋社の通信教育「GOES」の1講座として中学範囲の総復習を効率よくするために作られたものをそのままCD付きの書籍にしたものです。

通信講座は高かったのに、この値段。とてもお得ですが、通信講座を受けていた人は気の毒だな、と。そのくらい安いです。

著者の二本柳先生は河合塾で早大英語と私大英語、本科では英文解釈のハイレベル講座という感じに私大英語のハイレベルな講座を中心に講座を担当されている先生のようです。また、同じ語学春秋社より「二本柳啓文のトークで攻略早大への英語塾」という10時間分の講義CD月の本も出しておられます。予備校という所は教えるのが上手な先生がいわゆるできない学生の講座を担当することが多く(要するにできない学生の方が教えるのが難しい)、その点どうなのかな?と思いましたが、実際この本を一通り聞きながら読んでいてその心配は全くの杞憂で非常にわかりやすいです。後で調べたら他の御著書は愛護ができない学生相手のものが多く納得でした。また何かの機会に他の本についても書いてみたいと思いました。

内容は中学範囲のポイントをザックリと網羅している感じです。
しかし、このザックリが良いのです。

出来ない学生が中学範囲からやり直そうと思ってもまさかABCの練習らやる気にはならないでしょう。(と、いいつつ、最近は英語がそこそこできる子でも筆記体が書けない現実を見ることが多く正直暗澹たる気分になるのですが・・・)また、高校入試用の問題集のようなものだと、本当に苦手な学生なら大学受験生でも重荷になるはずです。

その点この本(この講義)は本当に大事なポイントしか語っていません。逆に言えばそのポイントに関しては非常にわかりやすく「最低限ここだけ抑えておけば何とかなる!」というような解説に徹しています。また演習量も最低限であり、理解するための問題に徹しています。こうしたことから網羅性が薄いとか、練習問題が全然足りないとかという感想を持つ人も当然いると思います。でも、この本の目的を達成するにはそれでいいのです。逆に足りないとか、網羅性が、という不満を持てたということはこの本を卒業する資格をすでに半分くらい持っている、という証拠でもあります。そういう人こそ集中してぜひ早くこの本を完璧にして次の段階の本に進んでください。

さて、話を戻しますが、これでもしよくわからない所があればその項目とその周辺が抜け落ちている証拠です。

そこは最初の1回目でしっかりチェックしておきましょう。と、言うのも2回目、3回目ではもう講義を聞いてしまっているのでわかっている場合が多いのです。だから抜け落ちカ所のチェックは1回目に集中して本にチェックを書き込んでおくなりしましょう。これはとても大切です。ぜひ実行してください。この本を生かすも殺すもここにかかっている、と言っても言い過ぎではないと思います。

チェックをしたら、あとはひたすら繰り返し聞きましょう。最初はしっかりと本を見ながら聞かなければだめですけれど、2回目以降はただCDをひたすら流しておくだけ、でも良いと思います。ともかくそうした感じで5~6回は聞いてください。なんなら他の科目勉強中のBGMとしてでもOKです。そのくらい聞き方はともかく何度も聞くことが大切です。5~6回と書きましたができれば10回くらい聞いて欲しいです。そうすることでこの本が血肉化します。それに10回以上聞けば元が取れた気がするでしょ?(笑い

その後、1回目でチェックした自分が抜けている項目を中学向けの問題集か高校受験用の薄い分野別問題集か何かでしっかり埋めれば、その後は良い本と定評のある高校生向け、大学受験生向けの色々な良書に手を出せると思います。

ちなみに目次は以下の通りです。

第1回 動詞(1)
第2回 動詞(2)
第3回 名詞・形容詞・副詞
第4回 不定詞(1)/動名詞
第5回 不定詞(2)/現在分詞・過去分詞
第6回 不定詞(3)
第7回 比較
第8回 接続詞
第9回 関係代名詞
第10回 いろいろな文

☆お勧めの学習法☆

1°CDをよく聞きながら、本を読んで行きます。(この時指示通り書き込みをします)

2°2~3回本を読みながらCDを聞きます。(この時、1回目で聞き逃していたこと、見逃していたこと、実はわかっていなかったものをチェックして、他の本なりで確認します)

3°あとはひたすら繰り返しCDを聞きます。元を取る気で聞いてください(笑い

4°中学生用、あるいは高校受験用の薄い分野別問題集等で1°2°でチェックしたところを補強しましょう。

5°マスターできたな、と思ったら次の基礎固めの本に移りましょう。

私としては本書の後には同じ出版社から出ている「早わかり超基礎英文法 」(瀬下譲著)を強くお勧めします。この本についても後日書く予定です。

2018年4月28日土曜日

YouTubeで学べる 長岡先生の集中講義+問題集 数学I+A+II+B  その(2)


さて、この本の記事の冒頭でラ講についてなどを書きましたが、ラ講当時から一貫して使われているタイトルがこの本にもあります。もちろん、ただの項目的なタイトルは昔と同じでも一向に不思議はありませんがそのことではありません。それは、

49、51にある「微分という思想」「積分という思想」という所です。

長岡先生は微分積分を単なる計算技術ではなく、人類史の中での偉大な思想的発見という意味での微分積分、という考え方を高校生にもわかる範囲で説明されようとしています。

これは先生の専門が数学史であることとも関係あるのかもしれません。この講義や解説の中で「微分積分はただの計算技術ではなく人間の思考の営みの中の一部なのだ」ということを受験と余りかけ離れることなく実感させるところでなので。

またこれは同時に数学を音声講座、映像講座という本だけではないメディアを併用することで成功させている希少な例とも言えると思います(これが意外に難しく、これに成功している本はほとんどありません。もちろん大学以上の読者を想定している本には良書がたくさんありますが)。

ただし、本書では純粋なまとめの部分の解説は無くなってしまっているので、今まで以上にまとめの部分を自分で熟読しなければいけません。でも、例えばこの「微分の思想」「積分の思想」のまとめ部分を鉛筆を動かしながら熟読し、問題と解説をよく読んだ上で講義を聴き、そこからこの「思想」というタイトルの意味を実感してほしいと思います。

尚、この部分に関しては、同じ旺文社から長岡先生が出している

「総合的研究数学Ⅱ+B」p532~540とp782~792(特にp785~791)

を参考にするとより効果的だと思います。

更に数学Ⅲの続刊があるとのこと。

「画竜点睛 (1) -君はすでに多くを知っている」
「画竜点睛 (2) -君と会えて良かった」

などの名タイトルもそこで復活することを期待しています。

参考までに本書の目次を掲載します。
以下は講義編です。各々、これに続いて「+問題集(問題編)余力がある人のための発展問題」となっています。

また、学校の授業に合わせて、でなければ上巻の三角比(25~28)が終わったらそのまま下巻の三角関数(40~44)に移り、これか終わったらまた上巻の29に戻る、というやり方が効果的だし合理的だと思います。(何と言っても間違いなく楽だと思います)

(その1)へ


(上巻)
●数と式、方程式、不等式、式と証明、二次関数

01「数と式」の数の基礎
02「図と式」の式の基礎
03二項定理と呼ばれる数と式の面白い秩序
04正式と整数の親戚関係
05多項式と式の値
06数学の基本となる論理の用語
072次方程式を解くとは
082次方程式における会と係数の関係
09実はとても大切な高次方程式という世界
10わかったつもりの連立方程式が意外と奥深い
11不等式を解くことの意味
12解けない不等式を考えることの意味
13絶対不等式の威力
14関数とグラフの基本関係
15関数のグラフの応用(1)
16関数のグラフの応用(2)
17実数の絶対値

●図形と式(解析幾何)

18解析幾何という強力な道具(1)
19解析幾何という強力な道具(2)
20解析幾何という強力な道具(3)
212変数関数 x=g(x,y)の取りうる値の範囲への幾何学的アプローチ
22軌跡の基礎(1)
23軌跡の基礎(2)
24曲線族

●三角比

25最も身近な数学=三角比の基礎(1)
26最も身近な数学=三角比の基礎(2)
27最も身近な数学=三角比の基礎(3)
28最も身近な数学=三角比とその応用

●集合と論理

29集合と論理の基礎(1)
30集合と論理の基礎(2)
31集合と論理の基礎(3)

●整数の性質

32不定方程式はいう名の確定した方程式
33意外に難しい「整数部分と小数部分」の規定
34合同式という強力な手法
35位取り記数法という人類文化史上の偉大な発見

●場合の数・確率

36場合の数の基礎(1)
37場合の数の基礎(2)
38確率の基礎
39余事象の確率と条件付き確率という道具


(以下下巻)
●三角関数
40 三角関数への飛翔

41 加法定理という名の余りにも偉大な発見
42 加法定理の実用的な応用
43 驚嘆すべき加法定理の自己増殖
44 加法定理の真に重要な応用――単振動の合成

●指数関数、対数関数

45 指数関数という特別な関数
46 対数関数の考え方――逆から見ることの面白さ
47 対数関数の応用
48 対数関数についての方程式・不等式

●微分法、積分法

49 微分という思想
50 微分の応用
51 積分という思想
52 定積分の基礎
53積分の応用――面積

●数列

54 数列の基礎(1)
55 数列の基礎(2)
56 数列の基礎(3)
57 苦手な人の多い群数列
58漸化式の基礎(1)
59 漸化式の基礎(2)
60 数学的帰納法という名の演繹的証明

●ベクトル

61 ベクトルの基礎(1)
62 ベクトルの基礎(2)
63 ベクトルの基礎(3)
64 ベクトルの基礎(4)
65 ベクトルの基礎(5)
66 ベクトルの基礎(6)
67 ベクトルの基礎(7)
69 ベクトルの基礎(8)

その(1)へ

YouTubeで学べる 長岡先生の集中講義+問題集 数学I+A+II+B  その(1)


この本は2018/3/16に上下巻同時に発売されました。


本書はかつて出版され、今は絶版となっている「数学ライブ講座 音声CD-ROM付 (聞けば聞くほどよくわかるシリーズ)」の1~3を小さくして、紙質を変えて編集し直した上に、練習問題を問題集並みに入れた、という感じの本です。

この本も「数学ライブ講座」同様、1994年(Jランドを含めれば1995年)まで文化放送とラジオ短波をキーステーションに放送されていた「旺文社大学受験ラジオ講座」(以下ラ講)の最後期(つまり後期からラストまで)で長岡先生が放送されていた講義と、それを再編集し直した「ラ講テープセミナ長岡の代数幾何総合演習」「同 基礎解析」をまとめて再編集したものです。

例えば、最初のページのまとめは前述の本の第1巻の最初のページのまとめと全く同じものですし、もっとさかのぼればラ講の「長岡の数学Ⅰ」講座の4月号にの第1科会に掲載されたのとも全く同じです。(長岡先生は数学Ⅰを2年度講義されており、そのどちらかは今手元に資料がないので明記できません)

従来の出版物などと比較して、このシリーズの特徴としては

・左ページのまとめに対応する右ページの問題は少なくなっている。

・その分、前述の本よりもまとめの項目が大幅に増えている。
 (これは今まで1ページでまとめていたものを数ページに分けて解説しているので)

・まとめのページの映像及び音声解説はなくなった。(長岡先生のこのまとめ部分の解説は深く数学の考え方の本質に触れさせてくれるものであっただけに残念至極、です)

・(映像解説はありませんが)類題や発展問題の演習がタップリできるようになっている。

・長岡先生の「場合の数、確率の分野の解説」はこの本が(ラジオ講座時代も含めて)受験レベルのものとしては初めてです。(ここ重要!)

もちろん、映像解説のない問題も解答は「ていねいな参考書の例題レベル」の飛躍のない解答・解説になっており、この本にしっかり取り組めば数学が苦手な学生でも(根気と時間は必要だが)、独学で十分大学入試に太刀打ちできるレベルにまで到達できると思います。

今まで長岡先生はⅠAⅡBの範囲までしか講義を出版など簡単に手に入る形で発表されていませんでした。(教科書レベルの講義は旺文社から出ている「【音声DVD-ROM付】長岡の教科書 」シリーズ等で出されていますが受験レベルのものはありません)

例外はラ講で1993年3月~1994年2月まで放送されていた長岡の“総合的研究”「微分・積分」のみでした。この本のような構成で右側にまとめ、左側に問題という構成で解説されていました。

これは旺文社の長岡先生特集サイトで極限に関する講義を今も公開されています。

このシリーズは数学Ⅲまで予定されているようですから、長岡先生としては初めての微分積分の教科書レベルを超えた、受験数学レベルの解説がラ講から20数年を得てようやく復活、ということになり今から完結が楽しみです。

さて、本書は目次は講義編が

これに続いて「+問題集(問題編)余力がある人のための発展問題」となっています。

教科書を一通り読んだ後ならば(つまり、きちんと理解はしていなくても三角関数と言えば「サインとコサインの平方の差が1」などの基本公式くらいは思い出せるレベルで十分)、この本と長岡先生の講義に必死に取り組めば「理解ができない』ということは殆どの人にとってないと思います。そう考えると、教科書も正直怪しいレベルの学生が、これだけで受験数学のそれなりのレベルに落ちこぼれることなく到達できるのですから、時間がかかるとは言っても結果的に短期達成できる確実な手段を与え化てくれる本とも言えます。

もし「この本は難しすぎる!」と思ったら教科書レベルの学習ができていない証拠です。その場合は同じく旺文社から出ている

「長岡の数学教科書数学Ⅰ+A全解説」
「長岡の数学教科書数学Ⅱ+B全解説」
「長岡の数学教科書数学Ⅲ全解説」

を使うと講義内容も連携しているのでスムーズに進むことができると思います。

その(2)へ

2018年4月26日木曜日

「ルールとパターンの英文解釈」蛇足

これはあくまでも私が個人的に行って効果があった勉強法です。

☆「ルールとパターンの英文解釈」でヒヤリング対策

しっかり、じっくり読みこんで意味がよくわかっている文章がこの本が終わると45個あることになります。

これを英語の音声読み上げサイトや読み上げソフトで読み上げてもらいながら、絶対に焦らず《2》から徹底的にシャドーイングします。

シャドーイングはご存知の方が多いでしょうが、ようするに後を追いかけるように一緒に読んでいくことです。これを何度も繰り返します。暗唱しましょうとまでは言いませんが(本当は言いたい)、時々英文を見ればほぼ暗唱しているかのようにスラスラ読めるところまで何度も練習します。

次に進みたくなったら、ディクテーションをします。
上手くできたら、次に進みます。
簡単なスペルミスを含めて3つ以上間違っていたらもう5回シャドーイングをしてからもう一度ディクテーションに挑戦しましょう。
次のディクテーションは全部できて合格とします。

これをしっかりやった後にセンター試験の過去問を解いてみましょう。
たぶん、どの年度でも満点が取れると思います。

これを「7.どのような学習法が効果的か?」で紹介した勉強のあとの復習として翌日にやる、とするとより相乗効果があって効果的です。

また、これを《40》までやると、自然と英作文力もついている、というおまけがついてきます。もちろん、英作文の勉強は他にやっていた方がよりその効果は大きいですが、これだけでも、やる前と比べたら格段に英作文力が上がっていると思います。

(1へ戻る)

「ルールとパターンの英文解釈」その3

7.どのような学習法が効果的か?

やり方は元になったラジオ講座とそのテキストを考えると以下の方法が最も効果的だと思います。

1°自分で訳を作る

2°問題文をコピーしたものを用意する。

3°ノートに解説の網掛け部分を写す。もちろん、パソコンで打ったものを打ち出しても良い。
 例えば《2》ならば



というような感じになると思います。

4°本文を読みながら、3°で作ったコピーに網掛け部分の(1)(2)・・・に該当する部分を書き込む。

 例)《2》でいえば、
 ①Light is very important because it helps us see things. (p9)
             (1)

というように書き込む。

5°このように読み進めながら自分の訳をチェックしていく。
そして間違えていたら自分の訳のどこが間違っているのか?そしてどういう間違いが原因で間違えた訳になってしまったのか?を確認し、直していきます。

6°もう一度最初に戻って自分が憶えていなかった単語と熟語等を専用の小さいノートを用意して左頁に英語、右頁に日本語という感じにまとめ憶える。
憶えるのはあくまでも本文に出てきた意味」で憶えるようにします。ここで欲張って手を広げると虻蜂取らずになりますので注意。

7°最後に5回ほど音読しましょう。
意味が分かっている英文を音読することは英語の学力を確実にあげてくれます。

8°一通り終えたら翌日もう一度自分で訳してみる。

このような感じで《40》まで頑張りましょう。《26》《27》《28》《30》《33》《35》は英文が2つづつあるのでこれは2日に分けても良いかもしれません。ただ、その場合(特に受験生ならば)最初の3つは2日に分けても30番台の3つは頑張って1日でやってみた方が良いと思います。もちろん全部頑張って各講1日というペースでもよいでしょう。

このようにして一通り終わったら今度はもう一度最初から一気に訳してみましょう。最初の方は馬鹿馬鹿しくなるくらいすんなり訳せるようになっているはずです。

これが終わったら「英文和訳演習」を一気に仕上げましょう。そしてさらに余裕があったら「英文解釈教室」に取り組めばよいと思います。あまり時間がない場合は「英文和訳演習」の中級・上級を片付けて過去問を解きまくりましょう。

以上ご参考までに。

8.最後に

まとめのようにするなら、この本はその後に出た「ビジュアル」や「現在売っている解釈教室シリーズ」の元になっている本です。だからそれらと比べるとこなれていない所やぎこちなさを感じるところもありますし、(あくまでも比較すればという話ですか)荒削りでもあります。

しかし、それだけに伊藤先生が功成り名を遂げて尚、新しい形に挑戦されたスタートになるものであり、それだけに他の本よりも読者に迫ってくるものがあります。それを感じられれば、特に英語ができない学生にとっては他のどの本よりも「克服しやすい伊藤本」になると思います。

長々と書きましたが終わりまで読んで頂きありがとうございます。
最後にこの本で勉強される高校生や受験生の皆さん、実は私もこの本(放送でしたが)で学んで偏差値30台から数年後には予備校で東大英語の単科講座を受け持ち、教えるところまで伸びました。なので、この本をしっかりマスターすればそれなりのレベルには達することができる生き証人が少なくても一人はここにいます。色々な情報が気になると思いますがこの本に決めたら最後まで信じて頑張ってください。

(1に戻る) (2へ戻る)       (蛇足に続く)

「ルールとパターンの英文解釈」その2

4.ルールとパターン

伊藤和夫の「ルールとパターン」というとほとんどの人が「ビジュアル英文解釈」を思い浮かべることと思います。しかし、ルールとパターンという考え方はこちらの方がオリジナルなのです。

ここでは簡単にこの本で述べられているルールとパターンと「ビジュアル英文解釈」で述べられているものとの相違を期待と思います。

まづ、パターンについてはどちらも変わりません

しかし、ルールの方は「ビジュアル英文解釈」で述べられているものはルール1~11までの11個、本書では13個のルールとなっています。本書における

「等位接続詞のあとのコンマについてのルール」
「長い句の扱い方についてのルール」

がビジュアルでは削られています。もちろん、これはたしかに他のルールと比べればランクというかレベルというか明らかに落ちるので、著者の伊藤先生御自身はおそらく途中で不要と思われて「ビジュアル英文解釈」では削られたのだと思います。しかし、これを削るかどうかは「ビジュアル英文解釈」やこの本の最初のレベルの英文から出発する必要がある人にとってはあったほうがいいのではないかな?と個人的は思います。

特に「長い句の扱いについてのルール」その練習は一度しっかりやっておくかどうかで初心者から中級者に昇っていく一つの大きな手掛かりとなると思うのですが。


5.この本はどんな人に向く本か?

さて、前述したようにこの本は「英文解釈教室シリーズ」や「ビジュアル英文解釈」と色々と中途半端にダブります。しかもそれらの本はこの「ルールとパターンの英文解釈」の後に出た本ばかりです。ですから、正直「ビジュアル」「教室シリーズ」等をやっている人はやる必要がありません。

ですからこの本をお勧めする読者は何と言っても「旧ラ講生」「駿台OB」「その他伊藤先生に思い出や思い入れのある人」です。


6.今の受験生にとって役立つのか?

5で懐古趣味的な本のような言い方をしましたが、今の学生に役に立たないか?と言われたら決してそんなことはありません。先程から私が書いてきた「中途半端にダブル」という性格をフル活用すればよいのです。ではどんな学生がどのように使えばよいか、これはズバリ

「英語が苦手で時間がない受験生」

です。こうした人は「ビジュアル英文解釈」と同じくらいのレベルからスタート(両者を比べるとわかりますがスタートは例文までまったく同じです)して、大体同じくらいの到達点に1冊で到達できます。しかも、全部で40講(そのうち1講はルールとパターンの説明だけ)という量も「やり切れる」という希望を感じさせてくれると思います。

もう一度確認すると「ビジュアル英文解釈」と本書は出発点と到達点がほとんど同じです(到達点は本書の方が若干高いと思います)。

同じスタートで同じ到達点なら、2冊より1冊ですむ方がいいに決まっています。また「ビジュアル英文解釈」に出てくる不自然な学生の話もないので無駄なく無味進むことができます。

そう考えると、これはあくまでも私の個人的見解ですが、この本が簡単に手に入るならビジュアルよりこれをやるべき、だと思います。

(1に戻る)       (3へ続く)

「ルールとパターンの英文解釈」その1

このブログの記念すべき第1回には先日(2018/4/19)、研究者から発売されたばかりの
『[新版] ルールとパターンの英文解釈』伊藤和夫著を取り上げます。






既にアマゾンのレビューにも書いていますし、内容は重なる所が多いですが、こちらでのみ書いていること(ここでしか書けない物とも)も多々ありますのでレビューをお読みいただいた方も是非お読みいただければと思います。

1.この本はそもそもどうやってできた本か?

この本は1983年4月~1984年1月まで文化放送とラジオ短波をキーステーションに旺文社の提供で放送されていた「旺文社大学受験ラジオ講座」(ラ講)の中で「伊藤のルールとパターンの英文解釈」の名で放送されたものを文字起こししたものです。

こう書くと放送終了後すぐに書籍化されたように聞こえますが、実はそうではありません。この文字起こし本が旺文社より出版されたのは放送終了の10年後、1994年3月なのです。この放送が終了してすぐにこの放送を録音した音声教材「ラ講テープライブラリー 伊藤のルールとパターンの英文解釈」というテキスト1冊、カセットテープ20巻の音声教材として出版されました。

ちなみに伊藤先生のラ講の講座はその翌年からは年の半分だけの出講となり、以下のような講座を担当されていました。

「ルールとパターンの英文解釈入門」
「ルールとパターンの英文解釈演習」(別内容で2年度)
「ケーススタディ英文解釈」(これは後に同名のラ講テープライブラリ―として発売)
「英文法集中クリニック」(半年×3年度)
(これは後にラ講テープライブラリ―でPart1~3の3部作として発売)

上記の「ケーススタディ」はテープライブラリーに続き、駿台文庫から「英文和訳の十番勝負」という本の原型になっています。「英文法集中クリニック」は後に研究社から出版された「英文法のナビゲーター(上)(下)」としてほぼ同じ内容で出版されています。


※(左)テープセミナーのカセット (中央)旺文社版 (右)研究社版

2.この本について

さて、話をこの本に戻します。

私は旺文社大学受験ラジオ講座(ラ講)で生放送(とはいえ、実際に生放送というわけではなくリアルタイムで、という意味です)されていた「伊藤のルールとパターンの英文解釈」を聞いていました。

講座の一番初めの4月の第1回の記念すべき伊藤先生のはじめの一言は

「みなさんこんにちは、私が伊藤和夫です」

でした。

真夜中に棒読みのような単調な語り口で「こんにちは」と聞いたときには思わず笑ってしまいましたが、その後になってもそこは編集されずそのままでした。でもそれも今では楽しい思い出です。

ところで、本放送とラ講テープライブラリーでは「比較」が一切扱われていません。

そこは旺文社版で書籍版になった時に、この原本となった講座の翌年に放送された「伊藤のルールとパターンの英文解釈演習」という応用篇で比較を扱った部分を差し替えて(つまり、元の講座は一つ減ったが、復習的内容だったので支障はなかった)網羅性を高くして出版されました。

ただ、その代りかどうかはわかりませんが、書籍版には放送当時、別冊解答集にあった練習問題「For Further Study」は全部カットされてしまいました。For Further Studyでは、講義で扱った文章の中から特にポイントになる部分を復習できるように2~3行(時に5~6行)の英文解釈の問題と解答が2~3題づつありました。

今回研究社から新版が出ると聞いて、今度は一切省略なしで出版されるかな、と期待して予約注文したのですが残念ながらそれはかないませんでした。


3.他の伊藤本とこの本はどういう位置づけになるか?

この問題は伊藤本で勉強しようとする受験生や高校生にとっては大きな問題でしょう。

結論から言えば、

「ビジュアル英文解釈Ⅰ・Ⅱ」とはほとんど重なり、
「解釈教室シリーズ」とこの本は基本的に中途半端に重なる本

といえます。

強いて言うならこの「ルールとパターンの英文解釈」を読んでから「旧版の英文解釈教室」「長文読解教室」にすすむというのが一番無駄のないパターンだと思います。しかし「長文読解教室」はともかくとして改訂版が出ている「英文解釈教室」の旧版をわざわざ探してくる必要もないでしょう。もちろん、多少の重なりを甘んじれば、今の「英文解釈教室」をこの本の後にやるのも良いと思います。

「英文解釈教室[入門]」「同[基礎]」はこの本とほとんどレベル的には重なります。入門の方はこの本の手前の英文法の確認という意味と割り切れば、入門をやってからこの本に取り組んでもよいでしょう。しかし、それでもこの本の《10》くらいまではレベル的にかぶります。基礎編はほぼ重なっていると言ってよいでしょう。到達点は「英文解釈教室」の最初くらい、という感じでしょうか。

その意味では「研究社が出すという意味」は実は全くなく、単純に伊藤本だから版権獲得して出版した、という「研究社のただの金儲け」なんだろうな、と思いました。

とはいえ、旺文社版の書籍がネットオークション等で馬鹿げた価格で取引されているのを見ると、旺文社が出版し続ける意志がないなら、研究社が出してくれる意味はあると思いますし、その価値は認めています。

(2へ続く)




2018年4月23日月曜日

はじめまして

はじめまして。
アマゾンのレビューを「杜のくま」の名前で書いています。
色々なもののレビューを書いていますが、仕事柄学参のレビューが多めになっています。
ただ、そこではあまり突っ込んで書けないこともあるので、せっかくだからそうした突っ込んだことも書いて行こうかな、と思いこのブログを始めました。
皆さんよろしくお願いします。